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医院名:
医療法人
三谷ファミリークリニック

院長:
三谷 和男(みたに かずお)
所在地:
〒593-8324
大阪府堺市西区鳳東町
4-354-1

電話番号:
072-260-1601
FAX番号:
072-260-1603
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漢方診療

はじめに

はじめに

漢方薬が全面的に健康保険の適応対象となったのが、昭和51年(1976年)のことでした。

すでに30年以上の歳月が流れているのです。

振り返ってみれば「漢方薬には副作用が全くない」といった神話や「西洋医学では対応できない様々な病態に有効」といった喧伝を背景に、飛躍的にその使用量が増えた時期もありました。

確かに、漢方が多くの患者さまの福音となっていったことは事実でしょう。

しかし、漢方が本当に西洋医学の先生方に受け入れられたのかどうかを考えてみますと、やや疑問が残ります。

「効いた、効かない」を「西洋医学に対して効果があるのか」という図式に当てはめすぎたのか、あるいは「驚くべき効果」が宣伝されすぎたのか、漢方の世界に興味を持った多くの先生方が「何か、漢方の世界って胡散(うさん)臭い話が多いね」と離れていかれました。

もう少し「普通に役に立つよ」という理解をいただく必要があったのでしょう。

西洋医学的治療でなかなかうまくいかなかった病気が、漢方でよくなった、ということは、私たち自身が患者さまの治療で経験していますが、それは“宣伝”することではないと考います。

地道に努力している(特に、養生への理解に時間をかけて進めている)漢方医の姿をお伝えすべきでしょう。

漢方薬の効果は、治療者と患者さまとの共同作業によるものなのです。

漢方診療についてコラム形式でご紹介しています

食養生について(2013/07/18)

生気通点論(2013/06/17)

四季の養生法(2013/05/13)

五行・五臓の相生相克について (2013/04/10)

五臓 (2013/03/21)

五行説 (2013/02/06)

大黄 (2013/01/16)

附子 (2012/12/07)

甘草 (2012/11/08)

黄芩 (2012/10/16)

柴胡 (2012/09/20)

人參 (2012/08/22)

桂枝 (2012/07/13)

麻黄 (2012/06/08)

葛根 (2012/05/18)

誤治をどう考えているのか? (2012/04/12)

瞑眩(めんげん)について (2012/03/16)

虚実の考え方と薬方4 (2012/02/14)

虚実の考え方と薬方3 (2012/01/17)

虚実の考え方と薬方2 (2011/12/12)

虚実の考え方と薬方1 (2011/11/15)

三陰三陽の考え方5 (2011/10/18)

三陰三陽の考え方4 (2011/09/12)

三陰三陽の考え方3 (2011/08/12)

三陰三陽の考え方2 (2011/07/12)

三陰三陽の考え方1 (2011/06/10)

漢方医学の四診(望、聞、問、切) 切診 腹診と具体的な薬方です (2011/05/17)

漢方医学の四診(望、聞、問、切) 切診 まず脈診です (2011/04/15)

漢方医学の四診(望、聞、問、切) 問診 (2011/03/04)

漢方医学の四診(望、聞、問、切) 聞診 (2011/02/08)

漢方医学の四診(望、聞、問、切) 望診 (2011/01/20)

患者さんを診ること (2010/12/09)

虚実の考え方と薬方1 (2010/11/08)

漢方医学のバイブル 傷寒雑病論(しょうかんざつびょうろん)のこと (2010/10/14)

クスリの効き方について (2010/09/06)

漢方医学の病理観 気・血・水理論について (2010/08/04)

薬の組み合わせー配合理論について (2010/07/02)

「苦い薬ほど良く効く」って本当なの? (2010/06/03)

漢方と民間薬について (2010/05/10)

感染と発病の違い host-parasite relationship (2010/04/06)

改めて、未病を考えてみます (2010/03/03)

自然の治癒力 (2010/02/04)

一に養生、二に看護(看病)、三四がなくて五にクスリ (2010/01/13)

漢方外来の理念 (2009/12/11)

歳時記 お屠蘇(とそ)のこと (2007/12/11)

漢方のお話 第一回目 (2007/12/11)


OTC医薬品とは何か


 2025年1月27日に行われた衆議院代表質問において、医療費削減の観点から、OTC(一般用医薬品)と類似する医療用医薬品を健康保険課適用から除外すべきではないかとの提案がなされました。

 これまで「漢方薬を健康保険から外す」動きが出てきた時、私たちは全力をあげて患者さんから署名を集めるなどの反対運動を展開してきました。しかし、今回の提案に「漢方薬」の文言はなく、あくまでも「OTC類似薬」となっています。漢方の一部はOTC医薬品として薬局・薬店などで購入可能ですが、OTC医薬品としての漢方薬と医療用漢方薬は同じものではありません。社会保険料の引き下げを目的にこの改革を主張していますが、まず私たちがOTC医薬品とは何かを正確に理解するところから始めたいと考えます。

OTCとは、Over The Counter(カウンター越しの)の略で、カウンター越しにお薬を販売するかたちに由来しています。医師に処方箋がなくても薬局などで購入ができる、かつては「市販薬」「家庭薬」「大衆薬」と呼ばれることもあった身近なお薬です(東京都薬剤師会)。これに対して、OTC類似薬の定義は今もって曖昧ですが、整理しますとOTC医薬品と成分(内容)が同一であり、かつ適応も同じでありながら、一般の方がドラッグストアなどで購入できる医薬品を指します。漢方薬に限ってお話をしますと、OTC医薬品はエキス含有成分が1/2~2/3におさえられていました。これは、医師の判断なしに購入できるために安全性を重視した配合になっていました。ただ、最近、「満量処方」と銘打ったOTC製剤が販売されていることで話がややこしくなっていますが、OTC薬と医療用との区別ははっきりしています。

 葛根湯を例にとりますと、医療用の葛根湯とOTCの葛根湯の適応は「類似」していますが同一とはいえません。さらに、「医師の処方箋」イコール「医師の判断」ですので、「効果を最大限に活かすには、葛根湯をどのような場面で、どう服用するか?」の指示を医師から受けて初めて葛根湯を有効に活かすことができるわけです。

日本東洋医学会は以下の4つの理由から医療用漢方薬の保険適用除外に対し強く反対しています。
1 医療機関への受診控えによる健康被害が懸念されます
  一見「軽い症状」に見えても、医師の判断によって重篤な病気が早期に発見されることがあります。漢方は「未病」を意識して治療を行うことで、生活の質の
  低下、疾病の重篤化を防いでいます。
2 経済的負担の増加することが予想されます
  医療用漢方薬の保険適用が除外されれば、長期間の治療を必要とする患者さんの経済的負担が大きくなります。漢方薬でコントロールできていたすぴjyぷがふあんていとなり、患者さんの通院回数が増え、医療費がかさむことが予想されます。
3 入院中の漢方処方ができなくなります
  入院中の漢方処方により、症状改善に加えて栄養状態が改善し、早期に退院できることが示されています。
4 漢方薬の適正使用が難しくなります
  「医師の診断・判断」なしに自己判断で漢方薬を選択・服用することで、誤った使用や不適切な組み合わせによる健康被害が生じるリスクが高まります。

日本東洋医学会は、日本臨床漢方医会、和漢薬学会とも連携し、医療用漢方薬の保険適用を維持し、すべての患者さんが適切な漢方治療を受けられる環境を守るために尽力してまいります。「先生、漢方薬が健康保険から外れるってほんと?」多くの方からご質問をいただきましたが、私たちは冷静に、かつ問題のありどころを見据えて進んでいきたいと考えています。

                                                         日本東洋医学会会長 三谷 和男